日々LLM(大規模言語モデル)やAIエージェントなど生成AIの情報が錯綜する中で、PwCコンサルティング社のレポートが大変興味深かったのでご紹介します。
当レポートでは今後の5年・10年を見据えた生成AIの進化、それが社会やビジネスに与える影響について展望しています。
本記事ではその展望のもと「AIエージェント時代の企業の在り方」を中心に考察します。
AI技術を牽引する3つの潮流
企業が「AIエージェント時代」を迎える背景には、生成AI技術における大きな3つの潮流の進化があると紹介しています。
引用元:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025-consideration.html
- 1.ベースモデル自体のさらなる精度向上
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LLMの課題として「①長期記憶の保持とアクセス性の限界」「②メタ認知抽象化と自己学習能力の欠如」が挙げられるが、それぞれ以下の理由でLLMの課題解消が見込まれます。
①マルチモーダルな情報の統合により複雑または重要な感情を捉えやすくなる。故に、情報の引き出しや保存すべき感情が明確になることで長期記憶が可能に。
②思考の連鎖(CoT)が発展することで、複雑な問題を分解し、その背後に隠れたパターンや意図を発見。故に、汎化力が向上し試行錯誤を行うため自己学習能力が向上。 - 2.デジタル空間:エージェントの普及
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従来の受動的なAIと異なり、ユーザーの目的に応じてAIが自律的にタスクを設計・実行する能動的なAIが普及する。
- 3.フィジカル空間:フィジカルAIの誕生
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ソフトウェア(SW)とハードウェア(HW)が一体化し、汎用かつ高度なタスク操作を実行するロボティクスが登場する。

LLMの進化に伴いAIエージェントが能動的になっていく。その後はハードウェアと一体化することで、高度なロボティクスが誕生していくわけだね。
AIエージェントの発展:能動的な「自律型アシスタント」へ
AIエージェントの自律度は、LLMの精度向上に伴い劇的に高まります。
引用元:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025-consideration.html
- 現在の主流 (ワークフロー型)
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定型的で予測可能な環境下で、明確な手順に従って業務を遂行する。
- 2035年への予測 (完全自律型)
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LLM精度向上により、予測不能な環境下で、目的やルールを自ら再定義しながら未知の業務を遂行する「完全自律型エージェント」が実現する見込み。



ワークフロー型は、例えばExcelマクロやGoogle App Script(GAS)、RPAによって、事前に決めたルールに基づいて処理を行うのよね。



そうだね。そして自律型になっていくと、プロンプトに基づいてAIが臨機応変に対応する形になっていくんだね。
AIエージェント時代の企業の在り方の変遷:3つの段階的な進化
AIエージェントの進化は、企業の組織構造と業務プロセスを根本から変革します。この変革は、以下の3つの段階を経て進むと予測されています。
引用元:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025-consideration.html
1. 現在 (~2025年):ピラミッド型組織(人が主体)
この段階では、人間が主体となって固定された業務フローを実行します。
2. シンビオティック・エンタープライズ (2025年~2030年):協働の時代
この段階では、AIと人が固定された業務フローを協働して実行します。
いろんな生物が一緒にいる多様性な環境下のように、人の中にAIも入った組織になることで企業活動の効率化・高度化が進みます。
3. シンギュラリティ・エンタープライズ (2035年~):AI主体の時代
この段階では、AIエージェントが主体となり、業務フローがリアルタイムで動的に最適化される抜本的な変革が起こります。
組織構造は、従来の社長を頂点としたピラミッド型組織からホラクラシー型組織へと刷新されます。
これは、機能別部門ではなく、業務ごとのエージェント・タスクフォース単位に再編されたフラットな組織を意味し、意思決定スピードが向上。
業務プロセスも、固定的なものから、AIエージェント同士の連携を踏まえ必要な業務に合わせて動的に再編・最適化されるフローへと進化します。
シンビオティック・エンタープライズにおける人間とAIの役割
AIエージェント時代において、人間の役割は大きく変化し、業務は「AIに代替可能な役割」と「人間にしかできない役割」に二分されます。
引用元:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025-consideration.html
AIに代替可能な役割(定型的・準定型的業務)
AIエージェント(AGT)は、以下の分野で人間の業務を代替し、効率化・高度化を推進します。
- 情報の収集・提供(情報収集・提供AGT)
- 経営層の意思決定補助(経営層のアドバイザーAGT)
- 業務の執行等の監査や法務チェック(法務・税務AGT)
- サプライヤーとの価格交渉・納期調整(調達AGT)
- 新しいアイデア出し(アイデア出しAGT)
- 組み立て作業等の生産実行(フィジカルAGT)
- 製品の外観・性能の評価(品質管理AGT)
- 商品の検索・比較・提案(商品提案AGT)
- 問合せに対する回答(顧客問合せAGT)
- システムの設計(設計AGT)
- システムのコーディング(実装AGT)
- システムのテスト(テストAGT)
- システムの監視とアップデート(アップデートAGT)
- 会計データ入力・整理(会計AGT)
人間に代替不可能な役割(創造的・倫理的な業務)
- 目標や作業の設定・指示
- AIの出力に対する最終的判断
- AIの業務要件設計
- AIの倫理性・透明性等の監視
以下の領域は、人間にしかできない役割として残ります。
| 役割 | 代替不可能な理由 |
|---|---|
| 創造的なイノベーション創出 | 抽象的なメタ情報を組み合わせる真の創造力が不足しているため。アナロジーによる汎化は可能だが、イノベーションを生み出す知識創造力は人間が担う。 |
| AIの制御・倫理・監視 | AIは出力に対して責任を持てず、また過去のデータに基づく非倫理的偏見や差別を生み出すリスクがあるため。AIの出力に対する最終判断や、AIガバナンスの策定など、責任が伴う役割は人間が行う。 |
| ヒューマンタッチなコミュニケーション | AIは長期記憶力が不足しており、長期的な信頼感や「心のつながり」といったコンテキストを捉えることが難しいため。心のケアを重視した人材育成なども含まれます。 |



AIは実務作業の多くを代替し、人間は戦略的な価値を創出する役割にシフトしていくのね。
まとめ
PwC社のレポートから、AIエージェントの進化に伴う企業組織の展望についてご紹介しました。
AIの進化は不可避であり、2035年に向けて企業は「AIが業務を担う時代」へ変化していくと考えられます。
AIが主体となる未来の組織を見据え、人間の創造力や倫理観といった価値を最大限に引き出すための組織変革と人材育成が求められているように思います。





